✔ 「最悪の奇跡が起こる」ホラー映画こと『NOPE/ノープ』を観てきました!
✔ 黒人差別の構造を克明に描き出した映画『ゲットアウト』の監督さんの映画なので、信頼していたのですが、やはり類まれなマイノリティのエンパワメント映画、というか、マイノリティに社会との闘い方を教えてくれる映画でした。
✔ 途中からネタバレ爆発なので、映画未見の方は、【ここからネタバレ有】と書いてあるところ以前までお読みいただいてからブラウザバックすることを推奨いたします。
黒人差別の構造を「ホラー」というジャンルで見事に描いてみせた『ゲット・アウト』の監督、ジョーダン・ピールさんの新作ホラーこと『NOPE/ノープ』を観てまいりました!
いやー…怖かったね!!
怖すぎて途中笑ってしまったぐらい怖かった(^^;)ゲットアウト的心理ホラーかと思いきやめちゃくちゃ直接的に心臓えぐられる怖さ!!は~まだ心臓がバクバク言ってる(@@;)
最初30分ぐらい、「この話はどこに転がっていくんだろう?」と思いながら観てたんだけど、中盤以降畳みかけるように全てのシーンが繋がって、怒涛のクライマックスへと繋がっていくので、息を呑んで見守ってしまった。
キャラがみんな魅力的なのもいい。
〇寡黙だけど頼れる主人公、OJ
〇ちゃらんぽらんだけど頼れる主人公の妹、エメラルド
〇とにかく可愛い!!エンジェルたん
〇とにかくアヤシイ!!ジュープさん
〇とにかく声がいい!!監督さん
と、みんなキャラが立ってて大好き。エンジェルたんが癒しでした。
そして一番すごいのは、観た後不思議とさわやかな気持ちになれること!!詳しいところはネタバレ感想のほうで言うけど、「落ちこぼれ」とされる人たちの奮闘ストーリーでもあるんだよね。だからすごい怖い話なんだけど、陰惨になりすぎてない。
うん、この映画は、類まれなマイノリティのエンパワメント映画、というか、「マイノリティに社会との闘い方を教えてくれる映画」だと思うよ。間違いなく今年一番の映画候補です!劇場で観るにふさわしい傑作ですので、ぜひ週末は最寄りの映画館へ!!
不穏さが漂うけど均整がとれて美しい映像とか、全般的に「映画ってこういうものでしょ?」というカッコよさがある映画でした。「大人の夏休み」という感じ。
まずはじめにこれはどうしても言わせてほしい、
〇おせっせシーンがない
〇無理やりねじ込まれた異性愛描写(キスシーンとか)もない
〇主人公の妹がレズビアンだけどストーリーに何の関係もない
もうこの時点で信頼できる。
みんなの癒しことエンジェルたんとエメラルドは、「定番の展開」なら絶対恋仲になるところだけど、一切そういうのないもんね。辛いことをふたりで乗り切った「友情」なんだよね。
それから、
・ホラー映画序盤で殺されがちな「寡黙な黒人キャラ」であるOJも、
・後半で殺されがちな「面白黒人キャラ」エメラルドも、
・いつでも殺されがちな「軽薄なヒスパニック」エンジェルも、
全員生存して、
ホラー映画で生き残りがちなキャラ(金髪の白人の女の子とか)が逆に全員死ぬのは皮肉がきいててよかった。チンパンジー事件で酷い目にあった女優さんが最後あんなひどい死に方するのはあまりに可哀想だったけど…。牧場主のジュープは自業自得。
ジュープはね、「闘い方を間違えたマイノリティ」なんだと思う。「アジア系」というマイノリティ属性を背負って、俳優としては子役のあと鳴かず飛ばずで、田舎で遊園地を経営している、そんな自分への劣等感に支配されている。白人の妻という「トロフィー」を勝ち得ても、自分が「脇役」という気持ちを捨てられない。
ライブショーで、「俺が主役だ」ってつぶやいてたもんね…。あのシーンで観客やスタッフが白人ばっかりなのは象徴的だよね。
劣等感を打破し、状況を変えるために、ジュープがたどり着いた結論は「暴力」だった。小さいころ、チンパンジーが自分を虐げる白人たちを残酷に、無残に、破壊しつくすのを目の当たりにした、その快感を忘れられなかった。だから、未確認生命体という暴力の塊を操る権利を独占すること、それを周りに見せつけることで、自分の地位を向上させようとした。
チンパンジー事件のところは、実話を下敷きにしているということもあって、一番緊張感があって恐ろしいシーンだったね。綺麗なセットに飛び散る血が凄惨さを増していて…。
でも、結果どうなったか。ショーの観客(白人:マジョリティ)だけでなく、ジュープ自身(アジア系:マイノリティ)まで死んでしまった。チンパンジーが、最後銃で撃たれたように。暴力で地位向上を目指そうとすれば、結局自分自身も滅びる、というメッセージなんだと思う。
反対に、OJとエメラルド、そしてエンジェルは、未確認生命体に「暴力」(銃とか)ではなく、「知恵」で立ち向かうもんね。相手の弱点、自分の強みをきちんと分析して、仲間と協力して戦略的に立ち回る。バイク爆走カメラマンを見捨てるところとか、すごく現実的だし。
人間だけじゃなくて馬(ラッキー)も助かるのも、すごくよかった。最初はお金のためだったけど、最後はみんなのために闘うっていうね。
そう!!だからこの映画は「マイノリティに闘い方を教える映画」だと思うのよ。自分の周囲の大切な人や仲間と力を合わせて、大きな存在に立ち向かおう。その際は、自分と相手の強みと弱みをよく分析して、戦略的・現実的に行動しよう、っていうメッセージを送っているんだと思う。
以下の記事でとりあげた「マイノリティ応援系」映画たちが、「マイノリティの人たちも幸せに生きていいんだよ」みたいなところで留まっているところを、実際に世の中を変えていくための具体的な戦略を提示する、そんなロックでかっこいい映画だったね!
それはそれとして暫く雲を見るのが怖くなりそうなんですけどね(;;)
私も動物園でチンパンジー見るたびに思い出しそう(;;)
結論:ジョーダン・ピール監督はやっぱり信頼できる!!
(終)
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