(本レシピのポイント(作成者:ちろちろ))
✔ Netflix作成ドキュメンタリー「Disclosure」が最高すぎる
✔ ①単純に面白い②主題が明確(「表現」することの可能性と危険性)③「正しい表現」を押し付けない、と三拍子揃った逸品
✔ 毎日「表現」に接するSNS社会だからこそ見てほしい
Netflixの「Disclosure」(邦題「トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして」)を見た。「ハリウッド映画や海外ドラマで、トランスジェンダーの人がどう描かれてきたのか」を丁寧に紐解いた一作なのだが、観終わった後、よすぎて、30分ほど放心していた。このドキュメンタリーは、3つの理由で、紛うかたなき傑作である。
①単純に「面白い」
お堅い邦題から「なんか小難しそう」と思われるかもしれないが、普通にめちゃくちゃ面白い。テンポよく挟まれる映画やドラマの説明、てきぱきしたインタビュー、明快なメッセージ性に、「『サイコ』にそんな側面が…」とか、「まさか『羊たちの沈黙』が…」とか、よくできた推理ドラマのように、唸りながら最後まで一気に見てしまうだろう。
面白すぎて紹介される作品を全て見たくなるので、「奴は盗んでいきます…あなたの時間をね」と某警部っぽく警告しておく。
②主題が明確
Disclosureの主題は明確で、「大いなる力には大いなる責任が伴う」ということだ(by某ヒーロー映画)。何かを「表現」することは、社会を改善する可能性と同時に、誰かを傷つける危険性をはらんでいる。
長い間、映画やドラマは、トランスジェンダー(生まれた時に与えられた性別に違和感を覚える人たち)を「異常者」として「表現」してきた(たとえば、「エース・ベンチュラ」では、愛した女性がトランスジェンダーの人と知った主人公が「生理的嫌悪感のあまり」ゲロを吐く)。それらは、たとえ歴史に残る名作だったとしても、人々のトランスジェンダーに対する偏見を加速させてきた。
近年、そうした反省を踏まえ、トランスジェンダーの人を自然に、魅力的に描く映画やドラマが増えており(Orange Is The New Black等)、差別解消の大きなきっかけになるかもしれない。しかし、一方で、そうした「表現」に苛立った人が、通りすがりのトランスジェンダーの人を殴りつけるかもしれない。
誰もが日々他者の「表現」を受け止め、自らも何かを「表現」しながら生きているSNS社会において、この主題が訴えるものは大きい。
③「正しい表現」を押し付けない
Disclosureは、しかし、「正しい表現」を押しつけない。紹介される「表現」は全て、何らかの「欠点」とともに描かれる。たとえば、「ボーイズドントクライ」は、トランスジェンダーの人の苦しみを克明に描いた名作映画として紹介されるが、同時に、下敷きとなった実話から黒人の存在を抹消した事実も触れられる。
「正しい表現」などなく、どんな優れた表現も、必ず誰かを傷つける。それでも、よりよい未来のため、(当事者の意見に耳を傾けながら)よりよい表現を模索していくしかないし、我々にはそれができる…表現者が抱える「暗中模索の絶望」と「その果てにある、微かな、しかし確かな希望」の絶妙なブレンドが、Disclosureを一層深い作品にしている。
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と、いうわけで、読者の皆様にはぜひ「ネトフリと契約して、魔法少女になって」いただきたい。絶望を乗り越える希望がそこにあるから。
コメント / COMMENT
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