(本レシピのポイント(作成者:ちろちろ))
✔ 映画「プロム」の示す「ハッピーエンド」に乗り切れなかった理由を語ります。
✔ 完全ネタバレなので、未見の方は回れ右をおすすめします!!
映画「プロム」を観た。レズビアンの学生、エマが、パートナーと参加できるプロムの開催に向けて悪戦苦闘するのを、落ち目の俳優たちが助けようとするが…というミュージカル映画。さわやかで、いい映画だった…のだが。
私は以下3つの理由から、今一歩、この映画の「ハッピーエンド」に乗り切れなかった。
①プロム問題の解決法
エマの目的は、「恋人とプロムに行くこと」。この映画では、この目的について、
(a)学校のプロムはエマを仲間外れに決行されてしまうが
(b)エマは誰でも参加できるプロムを企画して、好きな人と参加する
という解決策が提示される。
だが、(b)のプロムのほうは、LGBTQ+の人ばかり来ており「異性愛者と同性愛者は住み分けしよう!」という結論に見えてしまう。((a)のプロムに参加できた(=異性愛の)人のほとんどは2)のプロムに興味ないか、そもそも気付かなかったんじゃないかと…)
制作側の意図はわかる。「差別は絶対許さない!」的な、説教じみた映画になるのが嫌だったんだろう。でも、このラスト、ある程度LGBTQ+の権利運動が進んでいるアメリカならまだしも、そもそもセクシャルマイノリティという存在が黙殺・隔離されている日本においては、「そうだそうだ、LGBTQ+の人は多数派に見えないところでひっそり生きるべき」という、現状肯定のメッセージを伝えてしまわないか。いいじゃないか、いくら人権を声高に謳ったって。だって、声を上げなきゃ、多数派の人は見向きもしてくれないんだもん。
②親子問題の解決法
この映画のもう一つのテーマとして、「同性愛に無理解な親を持った子どもの葛藤」がある。具体的には、
(ア)エマとその親(レズビアンの子が親に育児放棄される)
(イ)エマのパートナーとその親(子が親の理想に縛られる)
(ウ) 俳優のひとりとその親(子が親の無理解から家出し、音信不通となる)
という3つの状況が提示される。
この映画での解決法は、以下の通り。
(ア)未解決(エマの親は一切登場しない)
(イ)親が「理解」してめでたしめでたし
(ウ) 母親の謝罪により、和解する
私が納得いったのは(ウ)だけだ。だって、他の二つは、親が一切「謝らない」んだもん。(ア)は問題外だし、(イ)の親は、「あなたがどんな子であろうと私はあなたを愛している」という「言い訳」だけ述べて、自分が行った数々の差別については一切謝罪しない。
経験上、心を傷つけられたら、謝ってくれない限り、溝は埋まらない。どんなに「あなたのことを考えて〜」とか言われても、私が聞きたいのは、「傷つけてごめん」の一言だけ。だってこっちは心を深くナイフでえぐられてるんだもん。まずは謝罪というバンソウコウを貼ってほしい。話はそれからだ。
③全体の落としどころ
クライマックスのダンスシーンで、「音楽が流れている場では、誰が誰と踊ったっていい」というメッセージが、結論として提示される。ここでの「踊る」はつまり「愛し合う」ということで、高らかな「性別にとらわれない愛の肯定」ですね、めでたしめでたし…いや、ちょっと待ってほしい。音楽が流れてなかったらダメなの?別にいつだって、誰が誰を愛したっていいじゃん。
映画の中で、「ミュージカルでは、登場人物がいきなり踊りだしたって誰も理由を気にしない」という台詞が登場する。こっちを結論として持ってきてほしかった。誰が誰と、どういう理由で踊ろうが、つまり、誰が誰と愛し合おうが、(対等な関係に基づく、お互いの合意のもとの恋愛であれば、)それはその人の自由なのだ。いいも悪いもない。それを「不健全」だとか「病気」だとか、「理由」にこだわる人がいるからエマはパートナーとプロムに行けなかったわけで、結論は「きちんとした理由があれば誰が誰を愛してもいい」ではなく、「そもそも誰かが誰かを愛することに理由なんていらない」となるべきだった。ミュージカルなんだからもっとロックに行ってくれよ!
…長くなってしまったが、以上が私がカタルシスを感じきれなかった要因である。なんかこう…種々の配慮の結果「ほっこり映画」として小さくまとまってしまった感じ。どうせなら「ブックスマート」ぐらいスカッとした理想の世界を描いてほしかった…。現場からは以上です(TT)
コメント / COMMENT
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[…] ㉚(映画「プロム」に物申す。/What I disagree with the movie Prom)映画「プロム」のハッピーエンドにイマイチ乗り切れなかった理由について。The reason why we can’t totally enjoy the movie Prom. […]