✓ ゼクシィは2023年12月1日、JR渋谷駅近くにて、創刊30年で同性カップルを初めて起用した広告を設置した。
✓ キャッチフレーズは「あなたが幸せなら、それでいい」。
✓ しかし、本当に「それでいい」のだろうか…?
2023年12月3日、彼女と渋谷駅・ハチ公口から出ると、すぐに大きな広告を見つけた。
目立つ場所にあることもあって、広告の前で何人かのカップルが写真を撮っていた。私たちもスマホを構える。
広告に近づくと、以下のように記載されていた。
…この意味深な文章からお察しかとは思うが、これはゼクシィ史上初の同性カップルを起用した広告だ。ゼクシィ運営のリクルートは婚姻の平等を求めるBusiness for Marriage Equalityというキャンペーンにも賛同しており、「安易にブームに乗っかった」というわけではない。企業として、一定の覚悟を持って社会的に宣言したものといえる。
事実、ビジネスインサイダーの下記記事で、担当者の方は以下の通り語っている。
事実婚のひとや同性カップルにも目を向けた紙面づくりをしていきたいということ、そのためにまずは広告を通じて可視化をしていきたいということ、それは歓迎すべきことだ。実際、広告を目にして、普段異性婚の広告しか目にしていない身としては、大変うれしくもあった、が。
彼女が、そばでぽつりとつぶやいた。
「結婚しないんじゃなくて、できないんだよ。それを”幸せならそれでいい”って、何様?」
そう、この「法律婚しなくても…幸せならそれでいい」というメッセージは、当事者さえ”幸せ”なら、同性婚の法制化なんかしなくてもいいでしょ?という風にも響きうるのだ。
むろん、担当者の方も、その点は自覚的だ。先ほどのインタビューでも、このように仰っている。
ここから読み取れるのは、法律上の後ろ盾がない中で、ゼクシィが同性カップルにできることは「結婚式を挙げる機会を提供する」ことだ、というスタンスだ。
ただ…。どうしても、私も思ってしまう。その思いがあるならなおさら、”幸せならそれでいい”で終わらせずに、その「幸せ」を阻む社会的要因があること、それを変えなければならないということまで、踏み込んで主張してほしかった、と。
昔、小学校の先生が、金子みすゞさんの「みんなちがってみんないい」という言葉が大好きで、クラスの標語として教室にでかでかと張り出していた。クラスでいじめが起きて、私たちが先生にいじめっこを何とかしてくれと言いにいくと、先生は言った。
「“みんなちがってみんないい”から、先生はその子をジャッジしたくない」
…いじめはなくならなかった。私はその言葉が嫌いになった。
要は、”幸せならそれでいい”って、なんか…めちゃくちゃ…他人ごとなのだ。
繰り返しになるが、同性カップルを広告に起用する決断をしてくれたことは、感謝しかない。可視化という意味で大きな意義がある。ゼクシィの担当者の方に深いお考えがあることもわかった。
でも、はっきり言って、通りすがりの人は、特に異性愛者で「ふつうに」結婚できる人は、そんな背景まで読み取らないし、調べない。「はいはい幸せならいいよね~」ぐらいで立ち去ってしまって、二度とこの広告のことは思い出さないだろう。ゼクシィがBusiness for Marriage Equalityという形で社会的に行動しているからこそ、あと一歩、あと一歩だけ踏み込んでほしかった。
幸せならそれでいい?よくないに決まってる。
ほとんどありとあらゆる社会保障・福利厚生制度から締め出されていて、家を借りる時だっていやな顔されて、事故とかあったら傍にいれないかもしれない、相続の権利だってお墓に一緒に入ることだってないかもしれない、
そんな社会的に脆弱な状態にあることは、
私がきゃんきゃんと過ごしていくら幸せを感じてたって、変わらない。
幸せ「だから」変えなきゃいけないのだ。
この広告が、単なる”きれいごと”で終わらずに、次の一歩を踏みしめる契機になることを願う。
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