✓ 映画「サブスタンス」観てきました!
✓ ルッキズム(外見や容姿で人を判断したり差別したりする考え方)を描いた映画だと知ってはいたのですが、めちゃめちゃ直球でこのテーマを扱う、鑑賞後非常にずっしりした気持ちになる映画でした。少なくとも日本でのキャッチコピー「かわいいが暴走」は全然合ってない。

映画「サブスタンス」を観てきました。ずっと日本で公開されるの待ってたんだよ、やっと観られてめちゃくちゃうれしい!!


…。

あれ?どしたの?

いや…なんか…作中のルッキズム描写があまりにも生々しすぎて…凹んでしまった。

設定からして破滅に向かって突き進む系の映画だとわかっていても、苦しいよね。劇中でエリザベスが投げかけられる言葉って、女の人だったら一度は体験しているものだと思うんだよね。「女の子は笑顔じゃなきゃ」とか。

うん、偉い人がおじいさんばっかりなのに始まって、スタッフさんが自分の名前を軽く扱われたり、「50歳で止まる」発言があったり、老化の描写(膝が曲がっちゃうとか)がめちゃリアルだったり、主演のデミ・ムーアの迫真の演技もあってものすごくリアルで、きっついんだよなあ。

スーの胸とかお尻とかへの嘗め回すようなカメラワークもきっついよね。男の人が観たらどういう気持ちになるんだろう、これ。クライマックスのシーンで近くに座ってたおじさんが溜息をつきながら退席していったんだけど、あの人どういう気持ちだったのかな。

まあ思ってたよりずっとグロかったということはあるかもしれないよ。血がドバドバ出る系の映画なので、皆様その点はお気を付けください…。ポスターだとなんか心理サスペンスホラーみたいにも見えるしね。

あ、このポスターね。


それはもう…鑑賞したいまとなっては余計、なにもかもダメとしか言いようがない。どうしてこうなった

このポスター本当に、本当にひどいよね。男性→女性に対するルッキズムがテーマなのに男性芸人に差し替える、元は二人の俳優さんなのになぜか同一人物、キャッチコピーも「かわいいが暴走」ってなんだこりゃしかない。こういうポスターができてしまうこと自体がサブスタンスだよ。

「かわいいが暴走」は日本版ポスターの統一標記なんだけどね。


いや「かわいいが暴走」ではないだろ!?性的消費の対象にされ続け、若く美しいことを求められ続けた女性が追い詰められた果てに破滅的行動に走ってしまう話をどう解釈したら「かわいいが暴走」になるねん。このキャッチコピーじゃ、エリザベスがただの自分大好きバカ女みたいやん。

エリザベスがあそこまで追い詰められてしまったのは、周囲によって若く美しいことでしか評価されない(輝けない)と思いこまされてしまったことが大きいからね。ああんなにキャリアを積み重ねている人が、「若く美しくない自分には(女として)なんの価値もない」と思っているのは辛い。

支えてくれる女友達とかがいたらまた違ったんだと思うけど、エリザベスの周囲には誰もいないんだよね…。同級生の眼鏡おじさんも「いつまでも昔みたいにかわいい」と言ってはくれたけど、それって結局”年の割に若い”ことを褒められているようにしか思えないよね。だから会いにいけなかったんだろうな。

眼鏡おじさんに関しては、エリザベスとして「妥協」したような気持ちがして嫌だったっていうのもあるだろうね。他人からの評価に頼ってちゃだめで、結局、自分自身が自分を愛してあげなきゃいけなかった、というのがこの映画の教訓だよね。ルポールじゃないけど、自分を愛せない人は、誰も愛せない。

しかし、あの薬不便すぎるよな。
1週間っていうのがまた微妙に長くて嫌!悪意を感じる。

あの薬のせいで最後ああいうことになっちゃうんだけど、血が噴き出しすぎでちょっと笑っちゃったけど、でもモンスターってののしられるエリザベス/スーが可愛そうでなあ…。最後も星の上で幻覚を見ながら散って、死骸はあっさり片付けられて。エリザベス/スーの人生って何だったんだ、ってなるよね。

せめてあのクソおじさんには無残に死んでほしかったなあ。トイレで手を洗わないとか、海老の食べ方がめちゃくちゃ汚いとか、若い女の子だと距離が近いとか、「嫌なおじさん」の解像度が高すぎて凹んだよ。バイクのお兄ちゃんがスーにはでれでれなのに、エリザベスには乱暴なのもきつい。

冷静に考えると薬の効果とか、スーの戸籍問題とか色々突っ込みどころはあるんだけど、テーマにまっすぐすぎるぐらいまっすぐ切り込むことで勢いがあって、最後までジェットコースターみたいに観られる映画ではあったよね。グロすぎるから万人におすすめできるかというとお薦めできないが。

血しぶきあびるエキストラの人めっちゃ楽しかっただろうけどね。あと今考えると、最初のエリザベスのエクササイズのシーンで「ぶよぶよの体じゃいやでしょ!?」みたいに言ってるの、めちゃめちゃ伏線だったのね。あのときはルッキズムにエリザベスもとらわれてるんだな、としか思わなかったけど。

観終わった後ずっしりした気持ちになるものの、ルッキズムというテーマに正面から向き合った意欲作です!血がドバドバ系大丈夫であればぜひ!
(終)
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