✓ 目を疑うニュースが飛び込んできたので、取り急ぎ報道からわかる事実関係を整理しました
✓ 超党派議連とは?などの疑問にもある程度答えられるかと思います!
今朝、なにげなしにスマホでニュースをチェックしていて、目を疑った。
以下、記事から引用する。
第三者から精子や卵子の提供を受ける不妊治療などのルールを定めた特定生殖補助医療法案の最終案が7日、超党派の国会議員連盟で示された。精子や卵子の提供・あっせんに伴う利益の授受を禁止し、違反した場合は最長2年の拘禁刑などを科す罰則を新たに盛り込んだ。年内の国会提出を目指す。
提供精子や卵子を扱う医療機関には認定制度を作り、あっせんは許可制とする。提供やあっせんに関わる利益の授受は禁止し、違反すれば2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方を科す。代理出産は認めない。
このあたりは、よくわかった。出自を知る権利を保障する観点から、日本では2000年に差し掛かる少し前ごろの段階で、第三者から精子や卵子の提供を受ける不妊治療の法制化が議論されてきていた。ようやくまとまったのね、と思いながら見ていると、
医療の対象は法律婚の夫婦に限り、事実婚や同性カップル、独身女性などは除いた。法律婚以外のカップルらに医療を実施した医療機関が中止などの命令に違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方を科す。…医療機関を介さない個人間のやりとりに対する規制は見送られた。
???
正直、ここで頭がパニックになって、フェイクニュースを疑った。えっ?なんで事実婚や同性カップルや独身女性をわざわざ排除するの?しかも医療機関に拘禁刑や罰則まで課すの?そんなことしたらリスクのある個人間のやりとりが爆増するの、火を見るより明らかだよね?
様々な疑問が頭を駆け巡り、心臓に氷柱を差し込まれたような気分になった。
落ち着け落ち着け、事実関係を確認してみよう。「特定生殖医療補助法案」と打ち込んで検索してみると、最初の方でこちらのホームページが引っ掛かった。
ここには、以下のように記されている(面会相手は超党派議連の事務局長である伊藤孝恵議員)。
伊藤議員は、AID*の歴史やその問題、諸外国がどのように出自を知る権利を法律で整備するに至ったかについて非常によくご存知でした。また、この1年間に議連に寄せられた生まれた子どもや親、そして今回法律の対象外となる同性カップルや選択的シングルマザーの声についても受け止めていました。当事者の声は議員連盟に届いていました。
(中略)
国会議員の中でAIDの実態を知っている人は少ないことだと感じました。そのため専門的な知識が反映されにくくなっていると感じています。また、AIDに対する曖昧な知識やイメージで否定的な見解を持つ議員がいるのは容易に想像できます。特定の専門知識を持つ議員が子どもの出自を知る権利について踏み込んで法制化をしようとするほど、議員間の合意形成は難しくなったのだと思います。さらに、超党派による各党の調整の難しさは、伊藤議員との面談を通して素人の私にもよくわかりました。
(中略)
法制化ができないまま20年以上の時が経過し、AIDの問題は複雑化して誰も手をつけられない状態になっています。この状況を整理できるのは法律しかなく、公的な支援が進むためにも法制化が必要です。しかし、法制化は、国が放置した20年の間に独自に進化してきたやり方を覆すことにもなり、犠牲が伴います。今回、法律の対象から外れた人々にとって法制化は絶望だと思います。『まずは法制化すること』を優先することで、この治療は前進するのか、あるいは後退するのかは現時点ではわからないというのが実際のところです。
ここからわかることは、たたき台の時点ですでに同性婚や事実婚のカップル、さらには独身の人は排除されていたということである(下記日本産科婦人科学会のHPでたたき台を見ることができる)。そしてその理由は、放置されてきた第三者から精子や卵子の提供を受ける不妊治療の法制化をなんとしても成し遂げるために、各党皆が納得できるよう、最も制限が厳しい案にしたということだ。
これは、超党派議連というものの性質を考えれば「あたりまえ」ではある。
超党派議連というのはその名の通り、与野党を超えて議員が集まる議連だ。ここで法案をまとめれば、国会に提出した時各党が賛成してくれるため、勿論、成立しやすくなる。だが、「与野党を超えて」集まる以上、当然、思想・信条の違いが大きくなり、意見をまとめるのは非常に困難になる。
今後、法案が成立した場合、特定生殖補助医療には公的な支援が行われることになるはずだ。これは私の推察だが、おそらく、「法的に夫婦と認められた男女カップル以外の、よくわからない人間関係に、公金を投入するのはおかしい」という声があったのだと思う。
たたき台の時点では、「夫婦」としか書いておらず、この排除の構図が第三者にはよく見えなかった。そもそも「出自を知る権利」を保障しようとして始まった法制化議論のため、「出自を知る権利」の保障の有無に主眼が置かれていたことも大きいと思う。
事実、先にあげたホームページでも、以下の記事(上が2024年10月、下が2023年11月)でも、「出自を知る権利」が保障されるか否か(十分保障されないことの懸念)が前面に出ている。
今回、冒頭の毎日の記事ではっきり
・医療の対象から事実婚や同性カップル、独身女性などは除く
・法律婚以外のカップルらに医療を実施した医療機関は罰される
と明示されたことで、これまで気づいていなかった人たちが「は!?」となり、一気にこの法案が耳目を集めたということだと思う。
不幸中の幸いというか、この法案はまだ国会に提出されていない(次の国会で提出予定)ため、世間の受け止め次第で、内容が修正される可能性はある(かつて厚生労働省が妊婦加算を導入し、世論の反発によってすぐ廃止に追い込まれたように)。
すでにXでは、「#安全な生殖医療を全ての方に」「#安全な生殖医療を全ての女性に」などのハッシュタグで、この法案に対して様々な疑問や懸念が投げかけられている。
一人の市民として、今後の成り行きを見守りたいと思う。
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