✔ 映画『バービー』を観てきました!思ったのの120倍フェミニズム映画だったし、思ったのの120倍細かいところまで考え抜かれた素晴らしい作品でした。あと2回は映画館で観たい。
✔ 途中からネタバレ爆発なので、映画未見の方は、【ここからネタバレ有】と書いてあるところ以前までお読みいただいてからブラウザバックすることを推奨いたします。
映画『バービー』、よかったね…。
うん…本当によかった。真面目に今年一番の映画になりそう。「GANTZ」の作者さんがミソジニー(女性蔑視)とマンスプレイニング(男性が女性を見下しながら知識をひけらかすこと)丸出しの感想ツイートをしてたから、逆にそこまで言わせる映画って何!?と思って観に行ったんだけど、正解だったね。GANTZの作者さんに感謝したいぐらい笑
「女性だって大変なんですよ~、わかってもらえると嬉しいです~」ぐらいのほんのりしたフェミニズム映画なのかと思ったら、スーパー剛速球の999%フェミニズム映画だったんだよね。そりゃGANTZの作者みたいなマンスプおじさんは怒るわ。
うん、バービーたちが暮らす夢の国(バービーランド)と対照的に、現実世界では、
・バービーが「エロ女!」って言われたりお尻を触られたり、
・大事な意思決定の場にひとりも女性がいなかったり、
男性優位社会であることがこれでもかと示されるもんね。映画の後半ではあることも起こって、バービーランドが大変なことになってしまうし。
でも、単純に「男が悪い!」っていう映画では全くなくて(フェミニズム自体がそうであるように)「男も女もつらいから、性別に囚われて自分を見誤ったり他者を見下すのはやめよう」という非常に前向きなメッセージを、男女問わず出してくれている映画なんだよな。男性も、「男であること」の生きづらさを感じている人には凄く刺さると思う。GANTZの作者みたいに、100%強者で男社会に完全順応という人は無理だろうけど。
ただ、この映画を観る前に、絶対に以下のネトフリの番組を見て、
・マテル社(バービーを作った会社)がどんな会社なのか
・バービーがなぜ作られ、なぜヒットしたのか
把握しておくべき。映画の理解度が跳ね上がる。というか観てないと、「???」ってなってしまうシーンが沢山あると思う。
それは間違いないね!たとえば、バービーを生み出したルース・ハンドラーが、「女の子のおもちゃが赤ちゃん人形しかなくて、母親/ケア提供者としての未来しか思い描けなくなってしまっているから、自立した大人の女性としての未来を思い描けるようにしたい」という思想を持っていたことを踏まえていないと、「バービー」の冒頭シーンは「なんで急に2001年宇宙の旅のパロなの…?赤ちゃん人形かわいそう…」みたいになっちゃうかと。
この番組のおかげで、一気にマテル社推しになったからね。
私は小さいころからずっとバービーで遊んできたから、バービーが等身大の女性として苦悩するシーンに凄く感情移入した…。
一方で私は、バービーはおろか、一度も人形遊びというものをすることなく大人になったんだけど、その私でも「あるキャラ」に物凄く感情移入できたな。多分日本人の多くの人が、このキャラに共感できるんでないかと思っております。
それはずばり、「アラン」です!!
ケン(男性社会)にも馴染めなくて、でもバービー(女性)とは違う存在で、コウモリみたいにそのはざまで何処にも行けずにウロウロしている切なさ、やりきれなさが、なんていうか、男性社会で頑張ってるけどうまく馴染めなくて、でもパンセクシャルっていうこともあって、同期の女性とかとも心置きなく接することができない自分に重なって、すごく胸に迫るものがあった。「千と千尋」のカオナシに通じる悲哀がある。
アランの存在ってすごく大きいよね。真っ向から男性と女性の間に横たわる大きな待遇の差を描いたフェミニズム映画ということで、どうしても男女二元論というか、「男性(ケン)VS女性(バービー)」という構図になりがちなところを、アランの存在が緩和してくれている。
「強い男VS弱い女」の単純な構図に陥るのを防いでくれてるよね。それで言うとあの社長さんも、いわゆる「強者男性」のポジションなんだけど、ちょっとコミカルなところがあって、映画のトーンを深刻になりすぎず、明るく前向きに保ってくれていたと思う。
「女性=正しい、男性=悪い」みたいな単純な映画では全くない。バービー自体、映画の中で何度もボコボコに批判されるし。
・女性のエンパワメントになってない、むしろ性的にみられる原因になってる
・頭空っぽでお洒落のことしか考えてない、現実に向き合う強さがない
・白人特権の象徴になってる
等々、マテル社が作った映画とは思えないほど痛烈に批判される。
「人間である限り、みな辛い。そして、性別がその一つの原因になっている。だから、性別に囚われすぎずに、自分が自分であることを認め自分で自分をケアできる、自立した存在になろう」というメッセージを全人類に対して強く強く放つ、大変バランスがとれた映画だよ。
人間は「悩み」「老いて」「死ぬ」存在であるということを、映画の中で描き方を変えて何度も示してくるもんね。辛くて苦しい現実があるからこそ、他人を性別等の属性で見下したり、自分と違うものと決めつけるのをやめて、自分の価値は自分で見つけられるようになろう!というメッセージに共感する人、多いのでは。
バービーの暮らす幻想の世界の描き方がまた上手で、人間世界との綺麗な対比になってるよね。真っピンクの、病気も飢えも災害も貧困も差別も苦悩もない世界。絵が張り付けてある冷蔵庫、つくりものの水面、毎日続くダンスパーティ。
人形あるあるが多くて面白かったね!私は小さい頃、「ピンクは女の子の色」と言われてからずっとピンクのものを身にまとうのをやめてきた(男性になりたかったので…)という経験があるので、男性も女性もピンクの世界の中でたのしく明るく暮らしているという絵面に物凄くエンパワメントされるものがあったな。他人に何を言われるかじゃなくて、自分がどうしたら楽しいと思えるか、満足できるかを考える、自分で自分の機嫌をとるって、すごく大事だよね。
あと、どうしても言っておきたいのは、「他人に寄りかかりすぎず、ままならなくて、欠点だらけで、何者にもなれない自分のことを認めてあげよう」っていうこの映画のスタンスから言うと、バービーとケンがくっつかないのは凄く!!凄くいい!!ということだな。
そうなんだよ。あそこで、「お互いがいないとダメなんです」ってなったらダメなんだよね。バービーはバービーで、ケンはケンでなければならない。なぜなら、おとぎ話と違って現実社会では、恋愛はすべてを解決しないから。魔法のキスで命がよみがえることもなければ、愛の力で世界が動くこともない。そもそも恋愛というものをしない人だっている。男性と女性が関わり合う方法は、恋愛感情だけじゃない。互いに対する尊敬、互いを自立した人間として扱うこと、それが先にくるべきだ。そしてそれには、自分で自分を認めてあげることが必須なのだ、というのがこの映画が一番言いたいことなんだよね。
そうそう、ケンだって、自分を軽く見られて辛かったんだよね。バービーランドでやろうとしたことは許せないけど。
あの行為に対してバービーが「私も悪いし…」ってなったのに、お母さんが「いや!怒っていいんだよ!!」って言ったところ、よかった。性別問わず、嫌なことされたら怒っていいんだよ。
あのお母さん、娘の反抗期をそういうものだよね、って受け止めてるところもよかったよね。エブエブみたいに「親の言うことは絶対だ!!」みたいにならないの。ルース(バービーの生みの親)のシーンもそうだけど、「親だからと言って、子の自立を妨げる権利はない」ということをはっきり明言してくれるのは、やいのやいの言ってくる親を持つ身として大変ありがたかった。すべてのシーンが考え抜かれている映画だったなあ。音楽も凄く良かったし…。
今度の週末、また観に行こうね!!
※結局、3回観ました。
(終)
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