女性殺人鬼はトレンド?映画『ミーガン』&『パール』に共通する「窮鼠猫を噛む」思想

レシピ / RECIPE

✓ ロボット少女が人を殺しまくる映画『ミーガン』と閉鎖的な田舎に住む女性が人を殺しまくる映画『パール』を観てまいりました。

✓ 全然ジャンルやストーリーが違う映画なのですが共通点が幾つかあり、これからのホラー映画のトレンドは女性殺人鬼かも…と思った次第です。

ちろちろです。きゃんきゃんがホラー映画好きということもあり、最近立て続けに
・ロボット少女が人を襲う映画『ミーガン』
・閉鎖的な農場で過ごす女性が人を殺す映画『パール』
を観てまいりました。どちらも「お約束」的どっきりシーンを挟みつつ、クライマックスに向けてじわじわ盛り上げてくれる作品で、ホラー映画は本当にジャンルとして成熟したなあ…と評論家みたいなことを思ったのですが、同時に、「あれ?なんか似てない?」とも思いました。

いや、ストーリーとかテーマ、着地する結末、怖さの質は全然違うんです。けれど、
・弱くて無害で純粋(に思える)存在が
・その存在を侮ったりコントロールしようとする「強い存在」に踏みにじられそうになって
・殺人という形で反撃する

という構図が共通しているなと。(例えば、ミーガンは見た目が少女だから男性から性的な辱めを受けそうになるし、生みの親からは「これが正しいんだ」という押し付け教育を食らう。パールもおとなしそうな女性ということで、頼った男性から気色悪いセクハラを受けるし、母親から「お前は分をわきまえて生きろ」と説教を食らうなど。)

ここで重要なのは、そういう扱いに歯を食いしばって我慢してる人がめちゃくちゃいるってことです。きゃんきゃんもこの前、駅でナンパされて、逃げたけどしつこくついてこられて逃げる羽目になって、電車を逃して予定をずらさなきゃいけなかった。だけど彼女は言い返したり殴り返したりできなかったわけです。だって、それで逆上されたら何されるかわからない。最悪、殺されるかもしれない。

だから、そんな経験がある人にとっては、これらのホラー映画は確かに怖いんですが、一種カタルシスを感じるかと。特に、弱い立場の人に我慢を強いていることに気づかなかった強い立場の人が「あれ…ちょっと待ってなんかまずくない?なんでこの人こんなキレてるの?あれあれ」ってなりながら死んでいくところは、いじめや抑圧の経験がある人なら「よくやってくれた」ってなると思います。単に「怖い」で終わらなくて、不思議な高揚感やそんな高揚感を感じる自分への罪悪感が絡み合い、より濃厚な鑑賞体験になる。

そもそも「弱い立場の人が我慢し続ける」ことによるじわじわ系の苦しみって、ホラー映画においてはあまり描かれてこなかった。なんかすごい化け物がいて襲ってくる!ギャー!みたいな感じで、強い立場の存在(モンスターとか怪異)が弱い立場の存在(人間とか小さい子供とか)を脅かしまくる!!って感じの映画がほとんどだったと思います。

でも、ホラー映画というジャンル自体が円熟してきて、人間社会の嫌な部分を(いい意味で)ほじくり返すようになってきたから、悪い殺人鬼がヒーローに討ち果たされました、めでたしめでたし、の単純な勧善懲悪ものではなくなってきた。「弱い立場の人だけが感じる苦しみがあって、それが積もり積もって爆発したときの負のエネルギーは物凄いんですよ(だからみんな、特に、優位な立場にあって普段そういう苦しみを感じない人、は気をつけようね)」というメッセージを打ち出せるようになってきた。言い換えれば、ホラー映画というジャンルの厚みが増してきたのではないかと。

『ミッドサマー』のアリ・アスター監督や『NOPE』のジョーダン・ピール監督はまさにそんな方向性の作品を撮り続けているので、いつかアカデミー賞をとるのでは…と思っています。

というわけで、もしかしてもしかすると、映画史に残るような女性殺人鬼がこれから沢山生まれるかもしれない…!?(ちなみに、今のところ私の一押し女性殺人鬼は映画『クリスティーン』のクリスティーンちゃんです。健気な子なんですよね~^^)とひそかに期待する今日この頃であります。

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