【LGBT+の可視化】決意と葛藤のはざまで

レシピ / RECIPE

✓ 2020年に彼女と結婚して、その事実についてなるべくオープンであろうと決意してきたが、葛藤もあり、周囲のすべての人にそれができてきたわけではない

✓ 最近あったふたつの出来事を通じて、改めて可視化の重要性と難しさを考えた

今国会に提出されたLGBT理解増進法案を巡り、とある議員が、「私の身の回りに(LGBT+は)いない(ので法案の必要性は低い)」という趣旨の発言をしていたが、その可能性は低いだろう。日本の人口の13人にひとりがLGBT+とされているからだ。

事実は、その議員の周囲の人で、自分がLGBT+の一員である事実をその議員に伝える人がいない、ということなのだろう。現代の日本社会でLGBT+であることを知られることは、非常な困難を伴う(場合によっては仕事を首になったり、人間関係が崩壊する可能性もある)から、致し方ないことではある。

実際、可視化を志してこのようなブログを運営し、職場(厚労省)でも可能な限り同性と結婚していることを周囲に伝えてきた私でも、いまだに伝えることを躊躇うことはある。単純に、怖いのだ。打ち明けた結果、「恥ずかしい」とか「勝手だ」とか言われたことも一度や二度ではないし、その人との関係性が壊れてしまうかもしれない、受け入れてもらえないかもしれないと、正直、いつも怯えている。

特に、昔、仕事でご一緒して、今も連絡をぽつぽつ取る方々(50代~60代ぐらいの方が多い)に関しては、現在離れた場所で勤務しており、その方のスタンスがわからないこと、築き上げた関係性が変わるのが恐ろしいことから、「対面で会えた時に、スタンスをそれとなく探ってから話すか決めよう」と、彼女と結婚したことを今年まで報告できずにいた。まあ、今思うと、自分自身差別を内面化して、必要以上に恐れてしまっていたのである。

しかし、今年の5月に入って、2度、それも立て続けに、そうした方々に彼女と結婚したことを看破されるという事態が起こった。

一度目は、Twitterに投稿した(そしてちょっと炎上気味になった)以下のツイートに記した件である。

要約すると、この方は昔お世話になった壮年男性で、たまたま私のいまの職場にお越しになったので応対したとき、左手の薬指に指輪がはまっていたことから、結婚していた事実が「バレて」しまった。「水臭いなあ」と悲しそうに仰られたので、「実は同性と結婚して、家族等とひと悶着あったので報告が遅れました」と言ったところ、いつもは即レスなのに、何日経過しても返事がなかったのだった。

ああ、このまま疎遠になってしまうのかな、と思っていたが、暫くして、以下のような返事が届いた。

少しびっくりしてしまって、返信に時間がかかってしまったけれど、気持ちに正直に生きてよいと思う。ご家族もきっと貴方の幸せを望んでいる。また自分の職場の近くに来るときは連絡してください、一緒に吞みましょう。

悩んだ末にこのような温かいメッセージをくださったことに感激し、自身の「差別されるかも」という恐怖から、彼に結婚を報告するのが遅れてしまったことを申し訳なく思った。

二度目は、それから1週間ほどたったある日のこと。同様に昔の職場でお世話になった壮年の女性おふたりから、連名で、一通の手紙と、写真立てが届いた。

手紙には、以下のようにつづられていた。

〇いきなりのプレゼント、びっくりしたと思います。
〇実は最近ネットで調べていて、貴方が結婚したことを知りました。
〇驚きもありましたが、それよりあなたが素敵で美しく心強いパートナーと結ばれたことの嬉しさと喜びがあふれてきました。ささやかですが、お祝いとして写真立てを贈らせていただきます。本当におめでとうございます。

短期間で同じような出来事が2回起きたことに驚き、やはり、おふたりにすぐに打ち明けられなかった自分を悔やんだ。正直言って、自分の中に、差別を恐れる気持ちに加え、「ある程度年代が上の方は、同性と結婚するということについて否定的である」という偏見があったことは否めなかったからだ。

この一連の出来事は、苦い思い出にもなったが、結果的にどちらからも温かいお言葉を頂けたことで、自身の恐怖が大きく和らいだ。言い換えると、自分が大事に思う関係だからこそ、ありのままの自分を知っていただきたい、と思えるようになった。それで離れてしまったとしても、もしご縁があれば、またいつか巡り合うこともあるだろうと思えたのだ。

6月に入ったら、学生時代の恩師の方々(70代~80代)に、彼女と結婚したことを報告しようと思う。どんな反応が返ってくるかわからない。それでも、私にとってかけがえのない関係だからこそ、私という人間の大きな要素を成す部分を、知っておいてほしい。

そうやって、少しずつでも、勇気を振り絞って、「実は身近にいるんですよ、私たちも、皆と何も変わらない、ひとりの人間なんですよ」ということをより多くの人に知っていただくことが、本当の「理解増進」だと思うのである。

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